コンセプトのつくりかた

> コンセプトのつくりかた / 玉樹 真一郎


任天堂Wiiの開発担当の玉樹さんの本。平易な文体なのでとても読みやすいですが、内容は奥が深いです。特に印象的だったポイントは、

・「良いものをつくる」はコンセプトにならない
誰もが理解できる既知の良さだけではコンセプトにはならない。未知の良さによってしか、世界を変えてしまうほどの「良いもの」は生み出せない。

・「できっこない」を見つける
「悪い」と否定されてしまうビジョンほど、実は「未知の良さ」を含んでいる可能性が高い。

・コンセプトとはビジョンとアイテムの集合体
何をしたいか?(ビジョンの集合体) + 何を用いるのか?(アイテムの集合体)

・差別化はコンセプトではない
コンセプトの結果、他と違うものができる。コンセプトにもとづかない差別化だけでは、世界を良くできない。

・アイデアの拡張法(ズラす質問)
(1)逆に言うと、どうなる?さらに突き詰めていくと、どうなる?
(2)悪いことを「絶対に避けられないこと、それが真実だ」と仮定すると、どうなる?
(3)立場をズラしたら、どうなる?
(4)関係のない物事を、無理やりつなげるとどうなる?
(5)悪いことについて「自分も悪いことをしている」と仮定すると、どうなる?
(6)本音としては、どう? / 建前としては、どう?
(7)2つの悪いことを掛け合わせる(または、同時に引き起こす)と、どうなる?
(8)時期をズラしたら、どうなる?
(9)ドラマ・小説・映画・アニメ・音楽に例えるなら、どうなる?

・業界の分析にポーターの5フォースが有効

会社でも国でもプロダクトでもサービスでも、コンセプトが重要な時代、というのはみんな気づいているとは思うんだけど、日常のさまざまな場面では、自分でコンセプトを考えるのをわざと避けてる?かのように思えるときがあります。決めてくれれば従います、みたいな放棄型。それって当然こういうものでしょ、みたいな決めつけ型。または未知なものに対する不安、責任を負うことの恐怖、などから無意識的に避ける。わかる、わかるよ。

そもそも最初に戦略がなければコンセプトを考えることはできません。例えば、新しいゲーム機を開発する、という戦略があって、Wiiのコンセプトが生まれた、みたいな。そして戦略自体も会社の方向性とかビジョンの実現のための大事なコンセプトですが、そういうのは偉い人が決めればいいでしょ〜と決めつけてしまう人が多いように思います。自分たちに関わる大事な部分なんだから、最大限組織の力を結集するべきところなんじゃないかな。自分でも、具体的な戦略について、ポーターの5フォース分析とか、SWOT分析とかをみんなで使ってみたいなと思ったりしました。

リーダーの役割は、素晴らしい戦略とかコンセプトを自分で思いつくことではなく、みんなの力を合わせて知見を引き出して形にすること。そしてそれが世界を良くすることだと信じて、自分がそれをやるんだとあきらめずに続けること、なんだろうな。それってまさに勇者。今こそ、冒険の旅に出よう。