Cover desgin by

Akihiro Takahashi

Developer

#004

Apr. 2021

Cross the Border

ひと続きの体験をつくる

01

Column

手触りのあるデザイン

Speaker
  1. MikakoNohechi

    Art Director / Designer

  2. YujiKunii

    Designer

  • これまでデジタルコミュニケーションの設計を担うことが多かったSONICJAMですが、最近ではECの需要と比例して「Webサイトとパッケージ」などデジタル/アナログを横断したブランディングに携わる機会が増えてきました。

    今回はパッケージ案件を担当した2人のデザイナーの対談から「手触りのあるデザイン」について紐解いてみます。

    米袋型で存在感を醸す、茶葉のパッケージ

    茶葉のパッケージ

    野辺地:「お茶のはまだ」のパッケージは、いわゆる“お茶そのもの”や“生産地の雰囲気”を出すというよりは、むしろ新しさのあるモダンな方向にデザインを持っていったんですよね。
    その背景には、鹿児島のお茶業界ならではの特徴があります。
    クライアントである浜田さんにお話を伺うと、鹿児島では若いお茶の作り手が増えていて、同世代同士、活気のあるなかで協力しあって盛り上げているそうなんです。だから商品の見え方としても、お茶の古いイメージからは離れた方がいいと思って。
    ECでの販売がメインとなる商品のパッケージだから挑戦できるもの、という側面もあるけれど、若い人に向けて作る、という方針でデザインしました。

    ——あの特徴的なパッケージのヒントって、どうやって探したんですか?

    野辺地:基本はPinterestとかで、いろんなパッケージを見ましたね。お茶のパッケージを見ていても新しい発想にはたどり着かないので、パッケージに限らずいろいろなものの形状を見て、なにかの拍子に米の袋の形に出会って、これは可愛いんじゃないかと。
    米袋以外にも「こういう形にしたい」というものを見つけて何案か提案しましたが、結局「これはお茶の保存に向かない」などのそもそもの制約で使えなかったものもありました。

    お茶のはまだ パッケージラフスケッチ

    國井:あのサイズの米袋は、最初から規格として既にあったものなんですか?

    野辺地:いや、鹿児島の印刷業者さんにオリジナルで作ってもらったんです。上で結ぶ紙紐も、太いバージョンとか、細いバージョンとか、つける位置も変えていろいろ作って、浜田さん側でオペレーションしやすいのはどれかシミュレーションしてもらったり。

    ——よく鹿児島からサンプルが会社に届いていましたよね。

    野辺地:鹿児島と東京で遠隔でやりとりしながら、結局半年以上かけて検討しましたね。細かいポイントは浜田さんと印刷業者さんで確認していただいて、紙の薄さとか扱いやすさなどである程度候補を絞った段階で、こちらに送ってもらって決めていきました。

    パッケージでブランドメッセージを伝える挑戦

    八海山「reint」フェイスマスク

    國井:八海山のコスメ「reint」のデザインは、まずブランドの背景にある「発酵」とか霊峰「八海山」とか、そういう製品の事実からイメージを広げていきました。
    キーワードをひたすら書き出して、「これ重要かな?」と思うものが見つかったら、そこをまた掘り下げて、ビジュアルに繋がる要素を見つけ出していきます。
    たとえばブランドの軸に「昔からの知恵」が掲げられているので、「昔から」というキーワードを膨らませて、象形文字のようなロゴなどから、全体をデザインしていきました。

    八海山「reint」フェイスマスク デザインイメージ

    ——八海山のパッケージは、実は霊峰八海山の等高線をモチーフにした線が特徴的ですね。

    國井:等高線は、実は印刷の時にちょっと苦労したポイントでもあります。色を重ねる順番や版ズレなどは、デジタルとは違う気の使い方が必要だと学びました。
    最初は八海山の等高線は、地の色よりも薄い色でデザインしていたんです。印刷で版がずれてしまったときにも変な余白ができないように計算して、等高線は少し太めにしていました。そうしたらいざインクを重ねた時に、薄い色と濃い色の重なりでインクが盛り上がって、線が3本あるような見え方になってしまって。
    印刷機の調整ではどうにもならなかったので、等高線を濃くしたデザインに急遽変更してなんとか解決したんですけど。

    ——やはりWebサイトとパッケージとでは、気を付けることは違ってきますね。

    野辺地:日常的に使う商品だと、普段使う上でストレスがないように、というポイントも必要だから、「デザイン的にはこれがいいけどこっちのほうが使いやすい」とか、より考えなきゃいけないことが増えそうですよね。

    國井:特にコスメのパッケージは、日常的に使っている人の意見を聞きながら考えていくことが大切ですね。もともと自分は「乳液っていつ使うものなの?」レベルでスキンケアに対して知らないことが多かったので、勉強しながら進めています。

    限られたスペース上での戦い

    ——Webとパッケージの情報デザインで、決定的に違うことってなんですか?

    野辺地:まず「パッケージは実際に手に取るものである」ということがWebと全然違います。Webってどんな商材を扱おうとも、結局はブラウザ内のデザインじゃないですか。パッケージは商材によってそれぞれデザインすべきことが違ってきますよね。
    たとえば「reint」のパッケージは、ブラウザのサイズよりもかなり小さいのに、その中に収める情報は薬機法の関係で端折れないものがたくさんあります。バーコードやリサイクルマークの表示、文字サイズの指定も無視できない。Web以上に考えることがたくさんあるな、と思いました。
    Webは公開時期を分けて掲載したり、モーダルで出したりなどいろんな形で拡張できるけれど、パッケージはそういうわけにはいかない。

    お茶のはまだ ラベル表示検討

    國井:後からデザインを調整できない、一度の決定で商品が大量に作られてしまう、っていうプレッシャーも大きいですよね。

    野辺地:そうですね。バリエーションが今後増えることも視野に入れておかなければいけない。現状ではその予定がなかったとしても、可能性があるものをざっと並べて、軸を通して考えるっていうことも最初にやらないといけないですね。

    振り幅の広いデザイナーとして

    ——デザインする分野がどんどん広がっていますが、今後やってみたい仕事はありますか?

    野辺地:私はパッケージも含め、店頭に置かれるツール類など、思いもよらない人がふらっと来て、見て、手に取ってもらえるようなものをやりたいです。
    Webサイトなどデジタル上のものって、人の目に触れる機会は多いけれど、自ら進んで情報を取りに行かないと見られないじゃないですか。場合によっては、ギリギリ親の世代とか、おじいちゃんおばあちゃんの世代だと見られないこともある。
    パンフレットやパッケージなどをSONICJAMでいろいろやらせてもらって、偶然の出会いで手に取ってもらえるもの、おじいちゃんやおばあちゃん、小さい子どもまで、自分から情報を取りにいけない層まで届くものって楽しいなぁと思いました。
    紙媒体のアナログなものはもちろん、イベントで使うデジタルコンテンツなどもいいですね。

    國井:僕は、分野に限らず、込めた意図に気づいてもらえるようなものをデザインしていきたいです。
    表には押し出していないけど、こだわったポイントを気付く人はしっかり気付いてくれたりしますよね。「reint」でいえば、パッケージに引かれた線が、「よくみたら八海山の等高線だ」とか。そういう“ちょっと隠したこだわり”に気づいてもらえるような、細やかなデザインをしていきたいです。

Writer
  1. AkikoNegishi

    Copywriter / Planner

03

Editors Note

 家にいる時間が増えると、どうにも住み心地が気になる。

 リモート生活の中で、気分転換と称して何度も衝動的な模様替えをしています。

 その度に「ちょっとこれは部屋で浮いているな」というものを、デザインが気に入っている空箱に移し替えてみたり、メルカリで断捨離したり、目に入るものを少しずつ気分に合わせてチューニングしてきました。(結果に納得いかないと、あつ森でのバーチャル模様替えですっきりするところまでがワンセット。)

「家に置いた時にマッチするかどうか」という判断軸は以前からありましたが、これからはその優先度がどんどん高くなってくるはずです。

 商品に出会ってから家で使用するまで、ではなく、使い切るまでがUX。たとえばコスメなら、残量が少なくなっても使いやすいことに加えて、美しく見えることが重視されるとか。どんなに小さな日用品であっても、その商品の“一生”に責任を持つことが、これからの作り手に求められることなのかもしれません。

(筆:Negishi)

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